民法

◎	Ａが失踪宣告を受け，唯一の相続人である妻ＢがＡ所有の甲土地及び乙土地を相続した。Ｂは，相続の１年後に，甲土地を代金1,000万円でＣに売り渡して代金を受領し，５年後には，乙土地を代金2,000万円でＤに売り渡して代金を受領した。また，Ｂは失踪宣告後３年目にＥと結婚した。失踪宣告後，11年が経過し，失踪宣告が取り消された。この事例に関する次のアからオまでの記述のうち，判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは，後記１から５までのうちどれか。 (1720) 【失踪宣告の取消し】　Ａが失踪宣告を受け，唯一の相続人である妻ＢがＡ所有の甲土地及び乙土地を相続した。Ｂは，相続の１年後に，甲土地を代金1,000万円でＣに売り渡して代金を受領し，５年後には，乙土地を代金2,000万円でＤに売り渡して代金を受領した。また，Ｂは失踪宣告後３年目にＥと結婚した。失踪宣告後，11年が経過し，失踪宣告が取り消された。
ア	Ａが失踪宣告時には生存しており，その３年後に死亡した事実が判明して，失踪宣告が取り消された場合，Ｂ，Ｃ及びＤがそれぞれの売買契約の当時，Ａの生存を知っていたとしても，Ｃは甲土地を，Ｄは乙土地をＡの相続人Ｂに返還する必要はない。正しい。 (1720A) 《異時死亡》　Ａが失踪宣告時には生存しており，その３年後に死亡した事実が判明して，【失踪宣告】が取り消された場合，Ｂ，Ｃ及びＤがそれぞれの売買契約の当時，Ａの生存を知っていたとしても，Ｃは甲土地を，Ｄは乙土地をＡの相続人Ｂに返還する必要はない。 (1720A) 《相続人》 ※←　Ａは死亡しており，相続人はＢのみだから。
イ	Ａが現に生存しているとの理由で失踪宣告が取り消された場合，前記各売買契約の当時，Ｂ及びＣはＡの生存を知っていたが，Ｄがその事実を知らなかったときは，Ｃは甲土地をＡに返還しなければならないが，Ｄは乙土地をＡに返還する必要はない。誤り。 (1720B) 《双方の善意》　Ａが現に生存しているとの理由で【失踪宣告】が取り消された場合，前記各売買契約の当時，Ｂ及びＣはＡの生存を知っていたが，Ｄがその事実を知らなかったとき，Ｃは甲土地をＡに返還しなければならないし，Ｄも乙土地をＡに返還する必要が［ある］（民法32条1項）。 (1720B) 《双方の善意》 □←　民法32条1項の「善意」は，行為者双方の善意を意味するから（大判昭13.2.7）。 ※←　失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは，家庭裁判所は，本人又は利害関係人の請求により，失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において，その取消しは，失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない（民法32条1項）。
ウ	Ａが現に生存しているとの理由で失踪宣告が取り消され，前記各売買契約の当時，ＢはＡの生存を知っていたが，Ｃはその事実を知らなかった場合において，ＣがＢから甲土地の引き渡しを受けて平穏かつ公然に現在まで占有を継続しているときは，ＣはＡに対し甲土地を返還する必要はない。正しい。 (1720C) 《時効取得》　Ａが現に生存しているとの理由で【失踪宣告】が取り消され，前記各売買契約の当時，ＢはＡの生存を知っていたが，Ｃはその事実を知らなかった場合に，ＣがＢから甲土地の引き渡しを受けて平穏かつ公然に現在まで占有を継続しているとき，ＣはＡに対し甲土地を返還する必要はない（民法162条2項）。 (1720C) 《時効取得》 ※←　Ｃは善意無過失であり，時効取得が成立するから（民法162条2項）。
エ	Ａが現に生存しているとの理由で失踪宣告が取り消された場合，Ｂ及びＥが婚姻時にＡの生存を知っていたときは，ＡＢ間の婚姻が復活し，ＢＥ間の婚姻は当然無効となる。誤り。 (1720D) 《重婚》　Ａが現に生存しているとの理由で【失踪宣告】が取り消された場合に，Ｂ及びＥが婚姻時にＡの生存を知っていたとき，ＡＢ間の婚姻が復活し，ＢＥ間の婚姻は［取消原因：×当然無効］となる（民法732条，744条）。 (1720D) 《重婚》 ※←　ＢＥは悪意であり，民法32条1項後段の適用はなく，前婚が復活し，重婚となる（民法732条，744条）。
オ	Ａが現に生存しているとの理由で失踪宣告が取り消された場合，Ｂは，前記各売買契約の当時，Ａの生存を知らなかったときは，Ｃから受領した代金のうち，遊興費として費消した金額をＡに返還する必要はない。正しい。 (1720E) 《現存利益》　Ａが現に生存しているとの理由で【失踪宣告】が取り消された場合に，Ｂは，前記各売買契約の当時，Ａの生存を知らなかったとき，Ｃから受領した代金のうち，遊興費として費消した金額をＡに返還する必要はない（民法32条2項但）。 (1720E) 《現存利益》 ※←　失踪の宣告によって財産を得た者は，その取消しによって権利を失う。ただし，現に利益を受けている限度においてのみ，その財産を返還する義務を負う（民法32条2項但）。
	１　アイ　　　　　　２　アウ　　　　　　３×イエ　　　　　　４　ウオ　　　　　　５　エオ