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(2829A) 《履行遅滞》
※←　故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は，これによって生じた損害を賠償する責任を負う（民法709条）。
※←　損害賠償債務は，被害者の請求を待たずに，不法行為時，すなわち損害発生時もしくは損害額を算定する基準となった時から，遅滞となり，当然に遅延利息を生じる(最判昭58.9.6)。
※←　公平の観点から，催告を不要とするのが妥当だから。

(2829B) 《失火責任》
※←　被用者の失火責任について使用者が責任を負うためには，被用者に故意又は重過失があることを要し，使用者の故意又は重過失は必要ではない(大判大2.2.5)。
※←　民法上，賠償をした使用者は加害行為をした被用者に対して求償権を行使することができるため，解釈論として被用者に不法行為の成立が認められる必要があり，また，一次的責任は被用者にあることから，失火責任法は，被用者にのみ適用されるべきだから。

(2829C) 《代理監督者》
※←1 ある事業のために他人を使用する者は，被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし，使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき，又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは，この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も，前項の責任を負う（民法715条2項）。
※←　【代理監督者】といえるためには，現実に被用者の具体的な選任・監督にあたっていることが要求され，単に会社の代表者であるということから直ちに《代理監督者》となるわけではない(最判昭42.5.30)。
※←　報償責任の観点から，原則として使用者について監督責任を負わせるべきであり，代理監督者が責任を負う場合を限定する必要があるから。

(2829D) 《死亡後の生活費》
※←　交通事故で障害を受けた者が，二度目の交通事故で死亡した場合について，第１の交通事故による損害について，就労可能期間については，死亡の事実を考慮しないでよく，死亡後の生活費は，第１の事故と死との間に相当因果関係がある場合に限り，控除するべきであるとされた(最判平8.5.31)。
※←　損害の原因と同一の原因により生じた利得でなければ，損益相殺の法理又はその類推適用により控除すべき損失と利得の関係にないから。

(2829E) 《未成年者》
※←　前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において，その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は，その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし，監督義務者がその義務を怠らなかったとき，又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは，この限りでない（民法714条1項）。
※←　責任を弁識する能力のない未成年者の行為により火災が発生した場合には, 714条１項に基づき，未成年者の監督義務者が火災による損害を賠償すべき義務を負うが，右監督義務者に未成年の監督について重大な過失がなかったときは責任を免れる（最判平7.1.24）。
※←　714条は監督義務者に一次的責任を負わせるものであり，失火責任法を監督義務者に適用すべきだから。