債権者甲所有の不動産上に，抵当権を有する乙がその債権者丙のために転抵当権を設定する旨の契約を結んだ場合

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(5653A) 《被担保債権額》
※←　（民法条）。転抵当とは，抵当権者がその抵当権をもって他の債権の担保とすることである（§376 �T）。転抵当権の被担保債権額が原抵当権の被担保債権額を超過していても差し支えない。ただし，転抵当権者は原抵当権の被担保債権額を超過して優先弁済を受けることはできない。したがって，転抵当権の被担保債権額が原抵当権の被担保債権額を超過していても，転抵当権者は転抵当権を取得することはできる。

(5653B) 《弁済期》
※←　（民法348条）。転抵当権の被担保債権の弁済期についても制限はない（転質に関する§348のような制限規定もない　もっとも，通説は責任転質においても原質権の存続期間を超えても有効と解釈しているが）。転抵当権の被担保債権の弁済期が到来しても，原抵当権の被担保債権の弁済期が到来しなければ，転抵当権者は転抵当権を実行しえない。しかし，これは効果の問題であって，転抵当権取得の要件ではない。また，転抵当権の被担保債権の弁済期が原抵当権の被担保債権の弁済期よりも後に到来する場合でも，それをもって転抵当権を無効とすべきではなく，有効と解すべきである。この場合，甲は弁済期に自己の債務を供託して抵当権を消滅させることができ，転抵当権は以後この供託金請求権のうえに存続することになる。

(5653C) 《付記登記》
※←　（民法376条1項）。転抵当において,原抵当権の債務者（甲）に対する対抗要件は,通知または承諾である（§377�T）。ただし，この原抵当権の債務者に対する対抗要件としての通知・承諾は確定日付ある証書による必要はない（§467 �U参照）。なぜなら，債権譲渡において確定日付ある証書を要求した趣旨は，もっぱら債務者以外の第三者に対する関係で債権の帰属関係を決定するためであるが,転抵当の場合はそれは登記（付記登記）によって決せられるからである（§376�U，§177)。本肢の表現は微妙であるが, (4)が明らかに正しいことから，［確定日付ある証書による承諾がなければ，丙は甲に対抗できない］と読んで，誤りとすべきだろう。

(5653D) 《設定の通知》
※←　（民法376条1項）。転抵当権設定登記（原抵当権設定登記への付記登記）は，あくまで第三者に対する対抗要件にすぎないから（§376 E,§177),丙は転抵当権設定登記をしなくても，乙が甲に対して転抵当権の設定の通知をした場合には，甲に対して転抵当権を対抗できる。

(5653E) 《通知・承諾》
※←　（民法376条1項）。転抵当権設定登記（原抵当権設定登記への付記登記）は，あくまで第三者に対する対抗要件にすぎない（§376 �U，§177)。原抵当権の債務者に対する二対抗要件は通知・承諾である（§377�T）。したがって，転抵当権設定登記だけをしたところで，丙は甲に対して転抵当権を対抗できない。