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善意の第三者
　ＡとＢとが通謀して，Ａ所有の甲土地の売買契約を仮装し，Ｂへの所有権移転の登記をした後，善意のＣがＢから甲土地を譲り受けた場合，ＡとＣとは前主・後主の関係に立ち（二重譲渡のような対抗関係には立たないので），Ｃは，登記なくしてＡに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができる（最判昭39.2.13）。 虚偽表示の無効は，善意の第三者に対抗することができないから（94条2項）。
差押債権者
　ＡとＢとが通謀して，Ａ所有の甲土地の売買契約を仮装し，Ｂへの所有権移転の登記をした後，Ｂの債権者である善意のＣが甲土地を差し押さえた場合，Ｃは，差押えによって利害関係を有するに至ったと考えられるので，Ｃは，民法94条2項によって保護される（最判昭48.6.28）。 売買の後に善意で土地を差し押さえることによって，当事者から独立した利益を有する法律関係に入ったと言えるから。
仮装債権の譲受人
　債権の発生原因である契約が虚偽表示である場合，その仮装債権の譲渡について通知を受けた債務者は，虚偽表示であることを善意の譲受人に主張することができない（大判昭13.12.17）。 これに対し、債権が仮装譲渡された場合、債務者は，債権譲渡が無効であるとして，譲受人からの支払請求を拒むことができる（大判大4.12.13）。
二重譲渡
　ＡがＢに不動産を仮装譲渡し，Ｃが善意でＢからこれを譲り受けた場合であっても，Ｃが所有権取得登記をする前に，Ａからの譲受人ＤがＢを債務者とし当該不動産について処分禁止の仮処分登記を経ていたときは，Ｃはその所有権取得をＤに対抗することができない（最判昭42.10.31）。 判例は，Ａ・Ｂを起点に，「Ａ・Ｂ」からＣへと，「Ａ・Ｂ」からＤへの二重譲渡があったとみなして，ＣとＤは対抗関係に立つと解している。

一般債権者
　Ａが，Ｂと協議の上，譲渡の意思がないにもかかわらず，その所有する甲土地をＢに売り渡す旨の仮装の売買契約を締結した後，Ｂに対して金銭債権を有する債権者Ｃが，Ａ・Ｂ間の協議の内容を知らずに，その債権を保全するため，Ｂに代位して，Ｂへの所有権移転登記をＡに請求した場合，Ａは，虚偽表示による法律関係を前提とした利害関係に立たない一般債権者Ｃに対し，Ａ・Ｂ間の売買契約の無効を主張することができる（最判昭42.6.29）。
土地の仮装譲渡と建物の賃借人
　ＡとＢとが通謀して，Ａ所有の土地をＢに仮装譲渡したところ，Ｂは，その土地上に建物を建築してその建物を善意のＣに賃貸した場合，Ａは，土地の所有権帰属につき法律上の利害関係に立たないＣに対し，土地の売却が無効であるとして建物からの退去による土地の明渡しを求めることができる（最判昭57.6.8）。
実質的無権利者
　ＢがＡとの通謀虚偽表示により，甲土地について所有権移転の登記を受けた場合，譲渡は無効であり，Ｂは無権利者だから，所有者Ａから甲土地を買い受けたＣは，その所有権移転の登記を受けなくても，その所有権を無権利者Ｂに対抗できる（最判昭34.2.12）。

(2104A) 《抵当権者》
※←　民法94条2項の第三者とは，別の法律原因により新たに利害関係に立った者であり，当事者から独立した利益を有する者をいう。

(2104B) 《借地上の建物》
※←　土地と建物は，別個の不動産だから。

(2104C) 《相続人》
※←　相続人は，一般承継人ではないから。

(2104D) 《差押債権者》
□←　一般債権者は除かれるが，差押債権者は，94条2項の第三者に当たる。

(2104E) 《建物の賃借人》
※←　建物の賃借人は，仮装譲渡された土地について新たに利害関係を有するに至ったものではなく，民法94条2項の第三者にあたらない（最判昭57.6.8）。