民法

◎	時効の援用に関する次のアからオまでの各記述のうち，判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは，後記１から５までのうちどれか。 (L0405) 【時効の援用】 **
ア	後順位抵当権者は，先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。誤り。 (L0405A) 《後順位抵当権者》　後順位抵当権者は，先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を《援用》することが［できない］（民法145条）（最判平11.10.21）。 (L0405A) 《後順位抵当権者》 ※←　時効は，当事者（消滅時効にあっては，保証人，物上保証人，第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む）が援用しなければ，裁判所がこれによって裁判をすることができない（民法145条）。 ※←　（最判昭平）。　担保価値の増大への期待は、順位上昇によって、反射的利益がもたらされるに過ぎないから。 (S2406A) 《後順位抵当権者》　時効により直接に利益を受ける者は時効を援用することができるのに対し，時効により間接に利益を受ける者は時効を援用することができない。具体例としては，抵当不動産の第三取得者は抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができるのに対し，抵当不動産の後順位抵当権者は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない（最判平11.10.21）。
イ	Ａから甲土地上の建物を賃借しているＢは，Ａが取得時効に必要な期間，甲土地を占有している場合であっても，甲土地のＡの取得時効を援用することができない。正しい。 (L0405B) 《建物の賃借人》② 　Ａから甲土地上の建物を賃借しているＢは，Ａが取得時効に必要な期間，甲土地を占有している場合でも，甲土地のＡの取得時効を《援用》することができない（民法145条）（最判昭44.7.15）。 (L0405B) 《建物の賃借人》 □←　① 建物の賃借人　　② 敷地の時効取得　　③ 援用できない ☆←　時効の援用によって、直接利益を受けるのは建物の賃貸人であり、建物の賃借人は、取得時効によって、間接的に利益を得るに過ぎない。　　　　　→　建物の賃貸人は、時効取得を援用できるが、建物の賃借人は、援用できない。 ※←　時効は，当事者（消滅時効にあっては，保証人，物上保証人，第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む）が援用しなければ，裁判所がこれによって裁判をすることができない（民法145条）。 ←　建物賃借人は，建物賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することはできない（最判昭44.7.15）。 ←　民法145条は，時効の援用権者は当事者である旨を規定している。しかるに，本件についてみるに，上告人らの主張によれば，上告人らは，本件係争土地の所有権を時効取得すべき者またはその承継人から，右土地上に同人らが所有する本件建物を貸借しているにすぎない，というのである。されば，上告人らは，右土地の取得時効の完成によつて直接利益を受ける者ではないから，右土地の所有権の取得時効を援用することはできない（最判昭44.7.15）。 (R0106B) 《建物の賃借人》① 　建物の賃借人は，当該建物の賃貸人による当該建物の敷地の取得時効を《援用》することが［できない］（民法145条）（最判昭44.7.15）。 (S2007E) 《建物の賃借人》③ 　建物の敷地所有権の帰属につき争いがある場合に，その敷地上の建物の賃借人は，建物の賃貸人が敷地所有権を時効取得すれば賃借権の喪失を免れることができるが，建物の賃貸人による敷地所有権の取得時効を《援用》することが［できない］（最判昭44.7.15）。
ウ	甲土地に抵当権が設定されてその旨の登記がされた後，甲土地を譲り受けた者は，その抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。正しい。 (L0405C) 《第三取得者》　甲土地に抵当権が設定されてその旨の登記がされた後，甲土地を譲り受けた者は，その抵当権の被担保債権の消滅時効を【援用】することができる（民法145条）（最判平11.10.21）。 (L0405C) 《第三取得者》 ※←　（民法条項）。 ※←　（最判平11.1.21）。 (S2406A) 《後順位抵当権者》　時効により直接に利益を受ける者は時効を援用することができるのに対し，時効により間接に利益を受ける者は時効を援用することができない。具体例としては，抵当不動産の第三取得者は抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができるのに対し，抵当不動産の後順位抵当権者は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない（最判平11.10.21）。
エ	詐害行為取消権を行使された受益者は，取消債権者の被保全債権の消滅時効を援用することができる。正しい。 (L0405D) 《詐害行為の受益者》　詐害行為取消権を行使された受益者は，取消債権者の被保全債権の消滅時効を【援用】することができる（民法145条）（最判平10.6.22）。 (L0405D) 《詐害行為の受益者》 ※←　詐害行為の受益者は，詐害行為取消権行使の直接の相手方とされているから。 ※←　（民法条項）。 ※←　（最判昭平）。 (S2007D) 《詐害行為の受益者》　詐害行為の受益者は，詐害行為取消権を行使する債権者の債権が消滅すれば，詐害行為取消権の行使による利益喪失を免れることができるので，その債権の消滅時効を援用することができる（最判平10.6.22）。
オ	主たる債務者が時効の利益を放棄した場合，保証人は主たる債務の消滅時効を援用することができない。誤り。 (L0405E) 《保証人》　主たる債務者が時効の利益を放棄した場合，保証人は主たる債務の消滅時効を【援用】することが［できる］（民法145条）（大判昭7.6.21）。 (L0405E) 《保証人》 ※←　連帯保証人は，時効による主たる債務の消滅により直接利益を受ける者に当たるから。〔時効の援用権者〕　然レトモ保証人カ主タル債務者ト連帯シテ債務ヲ負担シタルトキト雖，尚保証債務ノ特有タル主タル債務ニ附従スル性質ヲ失ハサルヲ以テ，主タル債務カ消滅シタルトキハ，保証債務モ亦消滅ニ帰スルモノト云ハサル可ラス。然リ而シテ保証人ハ主タル債務者ノ債務カ時効ニ因リ消滅シタルコトヲ主張スルコトヲ得ルハ，夙ニ本院判例ノ認ムルトコロナルニヨリ，本件ノ如キ主タル債務者ト連帯シテ保証債務ヲ負担シタル被上告人モ，亦自己債務ニ対スル消滅時効カ中断セラレ，若ハ時効ノ利益ヲ抛棄シタルトキト雖，主タル債務者ノ債務カ時効ニ因リ消滅シタルコトヲ主張スルヲ妨ケサルト同時ニ，叙上ノ如キ事実アリタレハトテ，単ニ此ノ一事ニ依リ被上告人ニ於テ，主タル債務カ時効ニ因リ消滅シタルコトヲ主張スルノ意思ナキモノト云フヲ得ス（大判昭7.6.21）。 ※←　（民法条項）。 ※←　（最判昭平）。 (S0102A) 《連帯保証人》　主たる債務について消滅時効が完成した場合，主たる債務者が時効を援用しないときでも，その連帯保証人は，主たる債務につき時効の援用をすることができる（民法145条）（大判昭7.6.21）。
	１　アウ　　　　　２×アオ　　　　　３　イウ　　　　　４　イエ　　　　　５　エオ