公法26年

◎

　行政裁量に関する次のアからエまでの各記述について，それぞれ正しい場合には１を，誤っている場合には２を選びなさい。

ア

　処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合でも，当該行政庁は，理由なく特定の個人を差別的に取り扱い不利益を及ぼす自由を有するものではなく，この意味において，行政庁の裁量権には一定の限界がある。

イ

　処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合には，処分が社会通念上著しく妥当性を欠き，裁量権の濫用に当たるものでない限り，処分の理由の提示に不備があったとしても，そのことを理由として処分が違法とされることはない。

ウ

　規制を目的とする不利益処分について，処分の根拠法令が処分を行うか否かの点で行政庁に効果裁量を認めている場合には，処分を行わないという行政庁の不作為が違法となることはない。

エ

　処分の根拠法令が，処分要件該当性の判断について行政庁に要件裁量を認めている場合には，事実認定について行政庁に裁量が広く認められる。

　正　解　　　１　　２　　２　　２

◎	行政裁量に関する次のアからエまでの各記述について，それぞれ正しい場合には１を，誤っている場合には２を選びなさい。 (2624) 【行政裁量】　* ** 　* ** 　*
ア	処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合でも，当該行政庁は，理由なく特定の個人を差別的に取り扱い不利益を及ぼす自由を有するものではなく，この意味において，行政庁の裁量権には一定の限界がある。正しい。 (2624A) 《》　処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合でも，当該行政庁は，理由なく特定の個人を差別的に取り扱い不利益を及ぼす自由を有するものではなく，この意味において，行政庁の裁量権には一定の限界がある。 (2624A) 《》 ※←　（憲法条）。最判昭30・ 6 ・24．本判決は，「行政庁は，何等いわれがなく特定の個人を差別的に取り扱いこれに不利益を及ぼす自由を有するものではなく，この意味においては，行政庁の裁量権には一定の隕界がある」としているから，本肢は正しい。
イ	処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合には，処分が社会通念上著しく妥当性を欠き，裁量権の濫用に当たるものでない限り，処分の理由の提示に不備があったとしても，そのことを理由として処分が違法とされることはない。誤り。 (2624B) 《》　処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合には，処分が社会通念上著しく妥当性を欠き，裁量権の濫用に当たるものでない限り，処分の理由の提示に不備があったとしても，そのことを理由として処分が違法とされることはない。 (2624B) 《》 ※←　（憲法条）。最判昭60・ 1 ・22百選1 129事件。本判決は，「本件一般旅券発給拒否処分の通知書は，……理由付記の要件を欠くものというほかはなく，本件旅券発給拒否処分に右違法があることを理由としてその取り消しを求める原告の本訴請求は，正当として認容すべきである」として，理由提示に瑕疵があることをもって，本件処分の取消を認めている。
ウ	規制を目的とする不利益処分について，処分の根拠法令が処分を行うか否かの点で行政庁に効果裁量を認めている場合には，処分を行わないという行政庁の不作為が違法となることはない。誤り。 (2624C) 《》　規制を目的とする不利益処分について，処分の根拠法令が処分を行うか否かの点で行政庁に効果裁量を認めている場合には，処分を行わないという行政庁の不作為が違法となることはない。 (2624C) 《》 ※←　（憲法条）。最判昭52・12・20百選T83事件参照。本判決は，行政庁に効果裁量が認められる場合においても，「社会観念上著しく妥当性を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し，これを濫用したと認められる場合」は違法となるとしている。したがって，不作為にあっても，裁量権の逸脱濫用と認められる場合には違法となる。
エ	処分の根拠法令が，処分要件該当性の判断について行政庁に要件裁量を認めている場合には，事実認定について行政庁に裁量が広く認められる。誤り。 (2624D) 《》　処分の根拠法令が，処分要件該当性の判断について行政庁に要件裁量を認めている場合には，事実認定について行政庁に裁量が広く認められる。 (2624D) 《》 ※←　（憲法条）。高松高判昭59・12・14参照。事実認定については原則として，行政裁量が認められない。もっとも，原子力発電所の安全性のように高度な科学技術問題について専門的行政機関が判断を行った場合，裁量を承認する裁判例もある。したがって，事実認定について行政庁に裁量が広く認められているわけではない。
	正　解　　　１　　２　　２　　２