民法

◎	次の１から５までの各記述のうち，正しいものを２個選びなさい。 (1907) 【物】 **
１	判例によれば，建物は，屋根瓦を葺き荒壁を塗り床及び天井を張る等して初めて独立した不動産となる。誤り。 (1907A) 《建物》　【建物】は，屋根瓦を葺き荒壁を塗り床及び天井を張る等して初めて独立した不動産となる［わけではない］（大判昭10.10.1）。 (1907A) 《建物》 ※←　屋根および周壁ができれば，床や天井ができていなくても，建物とみることができる（大判昭10.10.1）。
２	建物の増築部分は，既存建物の従物である。誤り。 (1907B) 《増築部分》　【建物】の増築部分は，既存建物の従物では［ない］（最判昭31.10.9）。 (1907B) 《増築部分》 ※←　増築部分を，独立の不動産とすることはできない（最判昭31.10.9）。
３	家具の所有者ＡがＢに賃貸中の当該家具をＣに売却した場合，特約がなければ，Ｃは，直ちにその所有権を取得するから，Ｂに対する賃料債権も，Ｃが売買契約時に取得することになる。誤り。 (1907C) 《賃貸中の家具》　家具の所有者ＡがＢに賃貸中の当該家具をＣに売却した場合，特約がなければ，Ｃは，直ちにその所有権を取得するが，Ｂに対する賃料債権は，Ｃが売買契約時に取得することになる［訳ではない］。 (1907C) 《賃貸中の家具》 □←　動産であるから，動産の譲渡に伴って賃貸人たる地位が移転することはない。 ※←　指図による占有移転は認められず，当然に，賃借権が承継されるものではない（民法178条）。
４	一筆の土地を贈与する契約において，物権行為の独自性を認める立場では，２つの法律行為が存在することになる。正しい。 (1907D) 《債権契約と物権行為》　一筆の土地を贈与する契約において，物権行為の独自性を認める立場では，２つの法律行為が存在することになる。 (1907D) 《独自性説》 ※←　当事者間の契約（債権契約）と物権変動をする意思表示としての物権行為が必要である。
５	判例によれば，物の売買契約を結ぶ以前の段階において，将来の売買代金債権を売却し，対抗要件を備えることは可能である。正しい。 (1907E) 《将来債権》　物の売買契約を結ぶ以前の段階において，将来の売買代金債権を売却し，対抗要件を備えることは可能である（最判平11.1.29）。 (1907E) 《将来債権》 □←　債権発生の可能性を要件とせず，期間の始期と終期を明確にするなどして債権が特定されている限り，有効に譲渡できる。 ※←　医師が社会保険診療報酬支払基金から将来八年三箇月の間に支払を受けるべき各月の診療報酬債権の一部を目的として債権譲渡契約を締結した場合において，右医師が債務の弁済のために右契約を締結したとの一事をもって，契約締結後六年八箇月目から一年の間に発生すべき目的債権につき契約締結時においてこれが安定して発生することが確実に期待されたとはいえないとし，他の事情を考慮することなく，右契約のうち右期間に関する部分の効力を否定した原審の判断には，違法がある（最判平11.1.29）。
	正　解　　　４　　５