民法

◎	無権代理に関する次の１から５までの各記述のうち，誤っているものはどれか。 (2405) 【無権代理】 **
１	Ａは，見知らぬ他人であるＢ宅に侵入し，Ｂの印章と登記関係の書類を盗み出し，それを用いて，ＢがＡにＢ所有の甲不動産を売却する代理権を与えた旨の委任状を偽造し，Ｂの代理人として，Ｃに対して甲不動産を売却する契約を締結した。この場合において，ＣがＡに代理権がないことについて善意無過失であっても，表見代理は成立しない。正しい。 (2405A) 《帰責事由》　Ａは，見知らぬ他人であるＢ宅に侵入し，Ｂの印章と登記関係の書類を盗み出し，それを用いて，ＢがＡにＢ所有の甲不動産を売却する代理権を与えた旨の委任状を偽造し，Ｂの代理人として，Ｃに対して甲不動産を売却する契約を締結した。この場合において，ＣがＡに代理権がないことについて善意無過失であっても，表見代理は成立しない（民法109条）。 (2405A) 《帰責事由》 ※←　第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は，その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について，その責任を負う。ただし，第三者が，その他人が代理権を与えられていないことを知り，又は過失によって知らなかったときは，この限りでない（民法109条）。 ※←　表見代理は，本人に何らかの帰責性があることを前提に取引の相手方を保護する権利外観理論を背景とする制度である。そのため，本人の知らない間に赤の他人が盗み出した書類で委任状を偽造したような場合には，本人に帰責性が無い。
２	判例によれば，Ａの親権者Ｂは，Ｃから金銭を借り入れるに当たり，Ａを代理してＡ所有の不動産にＣのＢに対する債権を担保するために抵当権を設定することはできないし，その設定行為を追認することもできない。正しい。 (2405B) 《利益相反行為》　判例によれば，Ａの親権者Ｂは，Ｃから金銭を借り入れるに当たり，Ａを代理してＡ所有の不動産にＣのＢに対する債権を担保するために抵当権を設定することはできないし，その設定行為を追認することもできない（民法826条1項）(最判昭42.4.18)。 (2405B) 《利益相反行為》 ※←　親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については，親権を行う者は，その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない（民法826条1項）。 ※←　利益相反行為とは，行為自体を外形的・客観的に考察して親権者のために利益にして未成年者のために不利益な法律行為を言う(最判昭42.4.18)。Ｂの債務を担保するためにＡ所有の不動産に抵当権を設定することはＢのために利益にしてＡのために不利益な法律行為に当たる。
３	代理権を有しない者が代理行為として契約をした場合，その契約の時に代理権のないことを知っていた相手方は，本人が追認をする以前でもこれを取り消すことができない。正しい。 (2405C) 《相手方の取消権》　代理権を有しない者が代理行為として契約をした場合，その契約の時に代理権のないことを知っていた相手方は，本人が追認をする以前でもこれを取り消すことができない（民法115条但）。 (2405C) 《相手方の取消権》 ※←　代理権を有しない者がした契約は，本人が追認をしない間は，相手方が取り消すことができる。ただし，契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは，この限りでない（民法115条但）。
４	無権代理人が本人の追認を得ることができなかったときは，代理権の不存在につき善意無過失の相手方は，無権代理人に損害賠償を請求することができる。正しい。 (2405D) 《無権代理人の責任》　無権代理人が本人の追認を得ることができなかったときは，代理権の不存在につき善意無過失の相手方は，無権代理人に損害賠償を請求することができる（民法117条2項）。 (2405D) 《無権代理人の責任》 ※←　1 他人の代理人として契約をした者は，自己の代理権を証明することができず，かつ，本人の追認を得ることができなかったときは，相手方の選択に従い，相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。 2 前項の規定は，他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき，若しくは過失によって知らなかったとき，又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは，適用しない（民法117条2項）。 ※←　民法117条2項は，相手方が悪意または有過失の場合に同条１項の適用を排除しているため，無権代理人に損害賠償を請求できるのは善意無過失の相手方に限られる。
５	判例によれば，ＡがＢに代理権を与えないまま「Ａ」という名称の使用を許し，ＢがＡの取引であるように見える外形を作り出して取引をした場合，この取引の効果がＡに帰属することはない。誤り。 (2405E) 《名板貸》　判例によれば，ＡがＢに代理権を与えないまま「Ａ」という名称の使用を許し，ＢがＡの取引であるように見える外形を作り出して取引をした場合，この取引の効果がＡに帰属することが［ある］（民法109条）(最判昭35.10.21)。 (2405E) 《名板貸》 ※←　第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は，その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について，その責任を負う。ただし，第三者が，その他人が代理権を与えられていないことを知り，又は過失によって知らなかったときは，この限りでない（民法109条）。 ※←　名板貸しの事案に民法109条を類推適用しており，本人への効果帰属を認めている(最判昭35.10.21)。
	正　解　　　５