公法

◎

　教科書検定が憲法に違反するか否かに関する次のアからウまでの各記述について，最高裁判所の判例の趣旨に照らして，それぞれ正しい場合には１を，誤っている場合には２を選びなさい。

ア

　教科書検定が憲法第21条第2項に違反しないとされるのは，審査が，教科書の誤記や誤植などの客観的に明らかな誤りがあるか，教科書の内容が教育課程の大綱的基準の枠内にあるかなどの点に限定され，かつ，執筆者の思想の内容にわたらない場合に限られる。

イ

　教科書検定が教科書執筆者の表現行為を制限することになるとしても，教育の中立・公正，一定水準の確保等の要請にかんがみれば，検定による表現の自由の制約は合理的で必要やむを得ない限度のものであるから，憲法第21条第1項に違反しない。

ウ

　教科書検定は，検定で不合格とされた図書を一般図書として「思想の自由市場」に流通させることを何ら妨げるものではなく，発表禁止目的や発表前の審査等の特質がないから，憲法第21条第2項の「検閲」には当たらない。

　　正解　　　２　　１　　１　　

◎	教科書検定が憲法に違反するか否かに関する次のアからウまでの各記述について，最高裁判所の判例の趣旨に照らして，それぞれ正しい場合には１を，誤っている場合には２を選びなさい。 (2205) 【教科書検定】　* ** 　* ** 　*
ア	教科書検定が憲法第21条第2項に違反しないとされるのは，審査が，教科書の誤記や誤植などの客観的に明らかな誤りがあるか，教科書の内容が教育課程の大綱的基準の枠内にあるかなどの点に限定され，かつ，執筆者の思想の内容にわたらない場合に限られる。誤り。 (2205A) 《検閲》　教科書検定が憲法第21条第2項に違反しないとされるのは，審査が，教科書の誤記や誤植などの客観的に明らかな誤りがあるか，教科書の内容が教育課程の大綱的基準の枠内にあるかなどの点に限定され，かつ，執筆者の思想の内容にわたらない場合に限られる［と東京地裁は判示したが、最高裁では否定された］。 (2205A) 《思想の内容》 ※←　（憲法条）。判例（最判平5.3.16 ）は，本記述のような判示をしていない。なお，裁判例（東京地裁昭45.7.17）は，「誤記，誤植その他の客観的に明らかな誤り，教科書の造本その他教科書についての技術的事項および教科書内容が教育課程の大綱的基準の枠内にあるかの諸点にとどめられるべき」で，また，審査が思想内容に及ぶものでない限り，教科書検定は検閲に該当しない，と判示している。
イ	教科書検定が教科書執筆者の表現行為を制限することになるとしても，教育の中立・公正，一定水準の確保等の要請にかんがみれば，検定による表現の自由の制約は合理的で必要やむを得ない限度のものであるから，憲法第21条第1項に違反しない。正しい。 (2205B) 《教科書の発行》　教科書検定が教科書執筆者の表現行為を制限することになるとしても，教育の中立・公正，一定水準の確保等の要請にかんがみれば，検定による表現の自由の制約は合理的で必要やむを得ない限度のものであるから，憲法第21条第1項に違反しない。 (2205B) 《教科書の発行》 ※←　（憲法条）。判例（最判平5.3.16）は「普通教育の場においては，教育の中立・公正，一定水準の確保等の要請があり…右の観点からして不適切と認められる内容を含む図書のみを，教科書という特殊な形態において発行を禁ずるものにすぎないことなどを考慮すると，本件検定による表現の自由の制限は，合理的で必要やむを得ない限度のものというべきであって，憲法21条１項の規定に違反するものではない」と判示している。
ウ	教科書検定は，検定で不合格とされた図書を一般図書として「思想の自由市場」に流通させることを何ら妨げるものではなく，発表禁止目的や発表前の審査等の特質がないから，憲法第21条第2項の「検閲」には当たらない。正しい。 (2205C) 《不合格図書》　教科書検定は，検定で不合格とされた図書を一般図書として「思想の自由市場」に流通させることを何ら妨げるものではなく，発表禁止目的や発表前の審査等の特質がないから，憲法第21条第2項の「検閲」には当たらない。 (2205C) 《不合格図書》 ※←　（憲法条）。判例（最判平5.3.16）は，検閲の定義につき税関検査訴訟（最大判昭59.12.12 ・憲法百選I Na75)の定義を踏襲した上で，「本件検定は･･･一般図書としての発行を何ら妨げるものではなく，発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから，検閲に当たらず，憲法21条２項前段の規定に違反するものではない」と判示している。
	正解　　　２　　１　　１