公法

◎

　内閣総理大臣の地位と権能に関する次のアからウまでの各記述について，それぞれ正しい場合には１を，誤っている場合には２を選びなさい。

ア

　内閣総理大臣が欠けたときは，内閣は総辞職しなければならない。なぜなら，憲法は，内閣総理大臣に「首長」たる地位を与えており，これが欠けた場合には内閣の一体性が失われることになるからである。

イ

　内閣総理大臣は，国務大臣の任免権を有するから，その意思に反しても一方的にこれを罷免することはできる。ただし，国務大臣を罷免する場合には，閣議において他の国務大臣の承認を求めなければならない。

ウ

　最高裁判所の判例の趣旨によれば，内閣総理大臣は，行政各部に対する指揮監督権を有するので，各国務大臣が所管事項についてする行政指導に対し指示を与えることも内閣総理大臣の権限の範囲内というべきである。

　　正解　　　１　　２　　１

◎	内閣総理大臣の地位と権能に関する次のアからウまでの各記述について，それぞれ正しい場合には１を，誤っている場合には２を選びなさい。 (2217) 【内閣総理大臣の権能】　* ** 　* ** 　*
ア	内閣総理大臣が欠けたときは，内閣は総辞職しなければならない。なぜなら，憲法は，内閣総理大臣に「首長」たる地位を与えており，これが欠けた場合には内閣の一体性が失われることになるからである。正しい。 (2217A) 《総辞職》　内閣総理大臣が欠けたときは，内閣は総辞職しなければならない。なぜなら，憲法は，内閣総理大臣に「首長」たる地位を与えており，これが欠けた場合には内閣の一体性が失われることになるからである。 (2217A) 《総辞職》 ※←　（憲法条）。憲法は「首長」として内閣総理大臣に優越的地位を与えている（憲法§68，§72，§75等）。これは，内閣の強固な一体性を実現し迅速に行動することを保障するためであるところ，「首長」たる内閣総理大臣が欠けたら内閣の一体性が保てなくなる。そこで，内閣総理大臣が欠けたときには内閣は総辞職するものと定められている（§70）。
イ	内閣総理大臣は，国務大臣の任免権を有するから，その意思に反しても一方的にこれを罷免することはできる。ただし，国務大臣を罷免する場合には，閣議において他の国務大臣の承認を求めなければならない。誤り。 (2217B) 《国務大臣の任免》　内閣総理大臣は，国務大臣の任免権を有するから，その意思に反しても一方的にこれを罷免することはできる。　したがって，国務大臣を罷免する場合には，閣議において他の国務大臣の承認を［求める必要はない］。 (2217B) 《国務大臣の任免》 ※←　（憲法条）。内閣総理大臣は，国務大臣を自由に任命かつ罷免する権限を持つ（§68－ I前段・II）。これは，内閣における内閣総理大臣の優越的地位を確立し，内閣総理大臣のリーダーシップの下に内閣の一体性を確保するための権限なので，任命や罷免にあたり閣議決定を経る必要はない。
ウ	最高裁判所の判例の趣旨によれば，内閣総理大臣は，行政各部に対する指揮監督権を有するので，各国務大臣が所管事項についてする行政指導に対し指示を与えることも内閣総理大臣の権限の範囲内というべきである。正しい。 (2217C) 《行政指導》　最高裁判所の判例の趣旨によれば，内閣総理大臣は，行政各部に対する指揮監督権を有するので，各国務大臣が所管事項についてする行政指導に対し指示を与えることも内閣総理大臣の権限の範囲内というべきである。 (2217C) 《行政指導》 ※←　（憲法条）。判例（最判平7.2.22）は，「内閣総理大臣が行政各部に対し指揮監督権を行使」するにっき「少なくとも，内閣の明示の意思に反しない限り，行政各部に対し，随時，その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導，助言等の指示を与える権限を有する」と判示する。
	正解　　　１　　２　　１