公法

◎

　次のアからウは，表現の自由の価値に関する文章である。ａはある見解を要約したものであり，ｂはそれぞれの見解に対する批判である。ｂがａに対する批判となり得る場合には１を，批判となり得ない場合には２を選びなさい。

ア

　ａ．表現の自由が有する自己実現あるいは自己充足の価値を重視し，表現の自由の目的は個人の自律の保護にあり，表現の自由は思想・情報の送り手を保護する楯であると解する見解がある。
ｂ．しかし，自己実現あるいは自己充足の価値を重視するこの見解によれば，商業広告のような営利的言論は，個人の自己充足とは無関係であるとして，憲法が保障する表現の自由に含まれないことになる。

イ

　ａ．表現の自由が有する自己統治の価値を最高度に重視し，民主主義の観点から表現の自由の絶対的保障を主張しつつ，表現の自由として憲法上の保障を受けるのは「公共的利害にかかわる事柄」のみであるとする見解がある。
ｂ．しかし，表現の自由の絶対的保障を帰結するこの見解によれば，例えば性的言論は，「公共的利害にかかわる事柄」ではないとして，憲法上の保障を受けない言論とされるおそれがある。

ウ

　ａ．表現の自由が有する真理到達機能を重視し，真理の最上のテストは市場の競争において自らを容認させる思想の力であり，その競争で最後に残った意見が真理であるとする見解がある。
ｂ．しかし，この見解は，「思想の自由市場」が必ずしも自由とは言い難い現実からして問題が残る。また，仮に「市場」が完全に機能しているとしても，最後に残った意見が真理であることを立証することは，不可能である。

　　正解　　　２　　１　　１

◎	次のアからウは，表現の自由の価値に関する文章である。ａはある見解を要約したものであり，ｂはそれぞれの見解に対する批判である。ｂがａに対する批判となり得る場合には１を，批判となり得ない場合には２を選びなさい。 (2108) 【表現の自由の価値】　* ** 　* ** 　*
ア	ａ．表現の自由が有する自己実現あるいは自己充足の価値を重視し，表現の自由の目的は個人の自律の保護にあり，表現の自由は思想・情報の送り手を保護する楯であると解する見解がある。ｂ．しかし，自己実現あるいは自己充足の価値を重視するこの見解によれば，商業広告のような営利的言論は，個人の自己充足とは無関係であるとして，憲法が保障する表現の自由に含まれないことになる。批判でない。 (2108A) 《営利的言論》　【表現の自由】が有する自己実現あるいは自己充足の価値を重視し，表現の自由の目的は個人の自律の保護にあり，表現の自由は思想・情報の送り手を保護する楯であると解する見解がある。　そして，自己実現あるいは自己充足の価値を重視するこの見解によれば，商業広告のような営利的言論も，個人の自己充足とは無関係［ではなく］，憲法が保障する【表現の自由】に［含まれる］ことになる。 (2108A) 《自己実現の価値》 ※←　（憲法条）。表現の自由は，個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させるという個人的な価値(自己実現の価値)，及び，言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという，民主政に資する社会的な価値(自己統治の価値)を有するとされる。自己実現あるいは自己統治の価値を重視する見解はどちらか一方の価値が認められれば表現の自由の保障が及ぶと考える。営利的言論は，自己統治の原理との関係はほとんどないが，自己実現の価値に仕えるものであるから表現の自由の保障に含まれることになる。したがって，自己実現ないし自己充足を重視する見解によっても，営利的言論に表現の自由の保障が及びうる。
イ	ａ．表現の自由が有する自己統治の価値を最高度に重視し，民主主義の観点から表現の自由の絶対的保障を主張しつつ，表現の自由として憲法上の保障を受けるのは「公共的利害にかかわる事柄」のみであるとする見解がある。ｂ．しかし，表現の自由の絶対的保障を帰結するこの見解によれば，例えば性的言論は，「公共的利害にかかわる事柄」ではないとして，憲法上の保障を受けない言論とされるおそれがある。批判となり得る。 (2108B) 《性的言論》　【表現の自由】が有する自己統治の価値を最高度に重視し，民主主義の観点から表現の自由の絶対的保障を主張しつつ，表現の自由として憲法上の保障を受けるのは「公共的利害にかかわる事柄」のみであるとする見解がある。　しかし，表現の自由の絶対的保障を帰結するこの見解によれば，例えば性的言論は，「公共的利害にかかわる事柄」ではないとして，憲法上の保障を受けない言論とされるおそれがある。 (2108B) 《性的言論》 ※←　（憲法条）。表現の自由が有する自己統治の価値を最高度に重視した場合，表現の自由の体系に制約的効緊をもたらし得ることになる。具体的には，表現の自由として憲法上の保障を受けるのは「公共的利害にかかわる事柄」のみであると考えた場合，性的表現はすべて憲法上の保障を受けないこととなり，本来憲法上保障されるべき表現まで憲法の保障の外に置かれてしまうおそれがある。
ウ	ａ．表現の自由が有する真理到達機能を重視し，真理の最上のテストは市場の競争において自らを容認させる思想の力であり，その競争で最後に残った意見が真理であるとする見解がある。ｂ．しかし，この見解は，「思想の自由市場」が必ずしも自由とは言い難い現実からして問題が残る。また，仮に「市場」が完全に機能しているとしても，最後に残った意見が真理であることを立証することは，不可能である。批判となり得る。 (2108C) 《思想の自由市場》　【表現の自由】が有する真理到達機能を重視し，真理の最上のテストは市場の競争において自らを容認させる思想の力であり，その競争で最後に残った意見が真理であるとする見解がある。　しかし，この見解は，「思想の自由市場」が必ずしも自由とは言い難い現実からして問題が残る。また，仮に「市場」が完全に機能しているとしても，最後に残った意見が真理であることを立証することは，不可能である。 (2108C) 《思想の自由市場》 ※←　（憲法条）。表現の自由の価値につき，表現の自由が有する真理到達機能を重視し，真理の最上のテストは市場の競争において自らを容認させる思想の力であり，その競争で最後に残った意見が真理であるとする見解がある（思想の自由市場論）。もっとも，思想の自由市場論は，そもそも自由市場というものは実際上存在しているのかという現実機能面についての疑念，及び，真理は究極において勝利する保障はあるのかといった原理的疑念がつきまとっていると批判される。
	正解　　　２　　１　　１