*

　*

　*

(2012A) 《君主主権》
※←　（憲法条）。国民主権の観念は，絶対王政の確立過程ないし確立後において，君主主権との対抗関係の下で社会契約論を背景に，人民主権として形成されてきたものである。このような経緯を踏まえるならば，国民主権の担い手・主体は実在する君主に対抗することができる具体的な人民であって，抽象的なものではないし，特別な資格を持った君主でもないことになる。

(2012B) 《直接民主主義》
※←　（憲法条）。国民主権の原理には，二つの要素が含まれている。一つは正当性の契機であり，他の一つは，国の政治のあり方を最終的に決定する権力を国民自身が行使するという権力的契機である。そこでの主権の主体としての［国民］は，実際に政治的立I£表示を行うことのできる有権者（選挙権者の総体）を意味する。そして，国民を有幄者ととらえることは，国民が政治に参加する制度である民主制と密接に結びつくことになる。　しかしながら，民主制のうち，国民自身が直接国の政治に関する意思決定を行う直接民主制を採用するか，国民は自己が選挙した代表者を通じて間接的に政治的な意思決定を行う間接民主制を採用するかは，制度のメリット・デメリットを比較衡量した上で決定されるものであり，国民を有権者ととらえることで決定されるものではない。

(2012C) 《命令的委任》
※←　（憲法条）。国民主権の原理には，二つの要素が含まれている。一つは権力的契機であり，他の一つは，国家の権力行使を正当づける究極的な権威は国民に存するという正当性契機である。そこでは，国家権力を正当化し権威づける根拠は究極において国民にあるという要素が重視されるので，主権の保持者としての「国民」は，有権者に限定されず，全国民（国籍保持者の総体）であるとされる。そして，国民を全国民ととらえた上で国民代表制を採用すると，代表者は特定の国民ではなく，全国民の利益となるように権限を行使しなければならないことになる。したがって，国民を全国民ととらえたとしても，代表者が特定の国民の意思に法的に拘束される命令的委任に拘束された国民代表性が要請されるわけではない。