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(2318A) 《客観訴訟》
※←　（憲法条）。憲法が具体的違憲審査制を採用していることからすれば，違憲審査権は「司法権」の範囲内，すなわち「法律上の争訟」（裁判所法§3-Dにおいてのみ行使されうるとも考えられる。しかし，同条は「法律において特に定める権限」として一般には争訟性が認められないとされる客観訴訟において裁判所に司法審査権限を認めている（民衆訴訟・機関訴訟）。そして，司法審査権限が認められる客観訴訟において，現に裁判所は違憲審査権を行使している。例えば，民衆訴訟についていえば議員定数不均衡違憲訴訟（最大判昭51.4.14),機関訴訟についていえば砂川町長に対する職務執行命令訴訟（最判昭35.6.17)がある。議員定数不均衡違憲訴訟判決は，「およそ国民の基本的権利を侵害する国権行為に対しては，できるだけその是正，救済の道が開かれるべきであるという憲法上の要請に照らして考えるときは，前記公選法の規定が，その定める訴訟において，同法の議員定数配分規定が選挙権の平等に違反することを選挙無効の原因として主張することを殊更に排除する趣旨であるとすることは，決して当を得た解釈ということはできない」とした。これは，議員定数不均衡のように具体的個々人の権利侵害を観念しにくくても多くの国民の基本的権利を侵害する場合が現実にありえ，このような場合に対応すべく民衆訴訟が設けられた以上，このような民衆訴訟において憲法適合性を判断できないのは不合理という判断に基づくものと考えられる。

(2318B) 《下級裁判所》
※←　（憲法条）。違憲審査権は，憲法81条の文言からすると最高裁判所のみに与えられているように見える。しかし，判例（最大判昭25.2.1)は，「憲法は国の最高法規であってその条規に反する法律命令等はその効力を有せず，裁判官は憲法及び法律に拘束せられ，また憲法を尊重し擁護する義務を負うことは憲法の明定するところである。従って，裁判官が，具体的訴訟事件に法令を適用して裁判するに当り，その法令が憲法に適合するか否かを判断することは，憲法によって裁判官に課せられた職務と職権であって，このことは最高裁判所の裁判官であると下級裁判所の裁判官であることを問はない」とした。

(2318C) 《処分》
※←　（憲法条）。憲法81条の「処分」とは個別・具体的な内容をもつ統治機関の行為を意味し，行政庁のなす行政処分はこの典型である。裁判所の行う判決が本条にいう「処分」に含まれるかについては肯定説と否定説がある。否定説は，裁判の効力は審級制により上級裁判所によって審査されるのが原則であると考える。しかし，日本国憲法は国政のあらゆる局面において憲法の最高法規性を貫徹しようとしていると解されるので，司法権の作用たる判決を「処分」から除外すべき積極的理由は見出しがたい。判例（最大判昭23.7.8)も，「裁判は一般的抽象的法規範を制定するものではなく，個々の事件について具体的処置をつけるものであるから，その本質は一種の処分である」とし，刑訴法応急措置法17条にいう「処分」の中にも裁判が含まれることは，憲法81条の場合と「同様である」と判示して，裁判も「処分」に含まれるとした。