民法

◎	意思表示に関する次のアからオまでの各記述のうち，正しいものを組み合わせたものは，後記１から５までのうちどれか。 (2502) 【意思表示】 **
ア	意思能力が欠けた状態で契約を締結した者は，後見開始の審判を受けていなくても，その契約の無効を主張することができる。正しい。 (2502A) 《意思無能力》　意思能力が欠けた状態で契約を締結した者は，後見開始の審判を受けていなくても，その契約の無効を主張することができる（大判明38.5.11）。 (2502A) 《意思無能力》 ※←　（民法条項）。意思能力を欠く者の意思表示は，無効である（大判明38.5.11）。
イ	被保佐人が，保佐人の同意を得て，自己の不動産につき第三者との間で売買契約を締結したときは，被保佐人がその売買契約の要素について錯誤に陥っており，かつ，そのことにつき重大な過失がない場合でも，その契約の無効を主張することができない。誤り。 (2502B) 《錯誤無効》　被保佐人が，保佐人の同意を得て，自己の不動産につき第三者との間で売買契約を締結したとき，被保佐人がその売買契約の要素について錯誤に陥っており，かつ，そのことにつき重大な過失がない場合，その契約の無効を主張することが［できる］（民法95条）。 (2502B) 《錯誤無効》 ※←　意思表示は，法律行為の要素に錯誤があったときは，無効とする。ただし，表意者に重大な過失があったときは，表意者は，自らその無効を主張することができない（民法95条）。 ※←　被保佐人は，民法13条１項各号の行為をするには，保佐人の同意を得なければならない（民13条１項柱書）。そして，錯誤無効（95条本文）は，13条１項各号の行為に当たらない。したがって，被保佐人は単独で錯誤無効を主張できる。
ウ	第三者の詐欺によって相手方に対する意思表示をした者は，相手方が第三者による詐欺の事実を知らなかった場合にも，その詐欺によって生じた錯誤が錯誤無効の要件を満たすときは，相手方に対し，その意思表示の無効を主張することができる。正しい。 (2502C) 《詐欺と錯誤》　第三者の詐欺によって相手方に対する意思表示をした者は，相手方が第三者による詐欺の事実を知らなかった場合にも，その詐欺によって生じた錯誤が錯誤無効の要件を満たすときは，相手方に対し，その意思表示の無効を主張することができる（民法95条、96条2項）。 (2502C) 《詐欺と錯誤》 ※←　相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては，相手方がその事実を知っていたときに限り，その意思表示を取り消すことができる（民法96条2項）。 ※←　意思表示は，法律行為の要素に錯誤があったときは，無効とする。ただし，表意者に重大な過失があったときは，表意者は，自らその無効を主張することができない（民法95条）。 ※←　詐欺と錯誤の関係について，通説・判例は，いずれかが優先適用されるとは考えていない。
エ	被保佐人は，保証契約を締結する前にその行為をすることについて保佐人の同意を得たときは，自己の判断でその保証契約の締結を取りやめることはできない。誤り。 (2502D) 《被保佐人》　被保佐人は，保証契約を締結する前にその行為をすることについて保佐人の同意を得たとき，自己の判断でその保証契約の締結を取りやめることが［できる］（民法13条1項2号）。 (2502D) 《被保佐人》 ※←　被保佐人が次に掲げる行為をするには，その保佐人の同意を得なければならない。ただし，第９条ただし書に規定する行為については，この限りでない。 ② 借財又は保証をすること（民法13条1項2号）。 ※←　保佐人の同意は，被保佐人が当該行為を単独で行える権能を付与するものであり，被保佐人に当該行為を行うことを強制するものではない。
オ	被保佐人と契約を締結しようとする者は，家庭裁判所に対し，利害関係人として，被保佐人に十分な判断能力があることを理由に保佐開始の審判の取消しを請求することができる。誤り。 (2502E) 《審判の取消請求》　被保佐人と契約を締結しようとする者は，家庭裁判所に対し，利害関係人として，被保佐人に十分な判断能力があることを理由に保佐開始の審判の取消しを請求することが［できない］（民法14条1項）。 (2502E) 《審判の取消請求》 ※←　第11条本文に規定する原因が消滅したときは，家庭裁判所は，本人，配偶者，４親等内の親族，未成年後見人，未成年後見監督人，保佐人，保佐監督人又は検察官の請求により，保佐開始の審判を取り消さなければならない（民法14条1項）。 ※←　被保佐人と契約を締結しようとする者は請求権者に含まれない。
	１○アウ　　　２　アエ　　　３　イエ　　　４　イオ　　　５　ウオ