民法

◎	消滅時効に関する次のアからエまでの各記述のうち，判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは，後記１から６までのうちどれか。 (2506) 【消滅時効】 **
ア	他人の代理人として契約をした者が無権代理人であり，かつ，本人の追認を得ることができなかった場合において，相手方の選択により無権代理人として履行に代わる損害賠償義務を負うときは，当該損害賠償義務は不法行為による損害賠償責任であるから，無権代理行為の時から３年の時効消滅にかかる。誤り。 (2506A) 《無権代理》　他人の代理人として契約をした者が無権代理人であり，かつ，本人の追認を得ることができなかった場合に，相手方の選択により無権代理人として履行に代わる損害賠償義務を負うとき，当該損害賠償義務は不法行為による損害賠償責任であるから，［契約の相手方が無権代理であることを知った時：×~~無権代理行為の時~~］から３年の【時効消滅】にかかる（最判昭32.12.5）。 (2506A) 《無権代理》 ※←　無権代理人の損害賠償義務（民117条）は，不法行為責任(709条）の特則であると考えられている。そのため，民法724条の適用を受けるが，時効の起算点は「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」である。したがって，契約の相手方が無権代理であることを知った時から起算される（最判昭32.12.5）。
イ	債務者が消滅時効の完成後に債権者に対して債務を承認した場合において，その後さらに消滅時効の期間が経過したときは，債務者は，その完成した消滅時効を援用することができる。正しい。 (2506B) 《再度の時効完成》　債務者が消滅時効の完成後に債権者に対して債務を承認した場合に，その後さらに消滅時効の期間が経過したとき，債務者は，その完成した【消滅時効】を援用することができる(最判昭45.5.21)。 (2506B) 《再度の時効完成》 ※←　債務者が消滅時効の完成後に債務を承認した場合には，その後，その時効を援用することは許されないが，その承認以後再び時効期間が進行することは妨げられない(最判昭45.5.21)。
ウ	特定物売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合に，買主が売主に対して有する損害賠償請求権は，買主が瑕疵の存在に気付かなくても，目的物が買主に引き渡された時から10年の時効消滅にかかる。正しい。 (2506C) 《瑕疵担保責任》　特定物売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合に，買主が売主に対して有する損害賠償請求権は，買主が瑕疵の存在に気付かなくても，目的物が買主に引き渡された時から10年の【時効消滅】にかかる(最判平13.11.27)。 (2506C) 《瑕疵担保責任》 ※←　前2項の場合において，契約の解除又は損害賠償の請求は，買主が事実を知った時から１年以内にしなければならない（民法566条3項）。 ※←　瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権は，売買契約に基づき法律上生ずる金銭支払請求権であるから，民法167条１項の｢債権｣にあたる。そのため，目的物引渡しから10年で消滅時効にかかる(最判平13.11.27)。
エ	不法行為に基づく損害賠償請求権の存在が訴訟上の和解によって確定され，その弁済期が和解の時から１年後とされた場合であっても，その請求権は，その和解が調書に記載された時から10年の時効消滅にかかる。誤り。 (2506D) 《裁判上の和解》　不法行為に基づく損害賠償請求権の存在が訴訟上の和解によって確定され，その弁済期が和解の時から１年後とされた場合，その請求権は，その和解が調書に記載された時から10年の《時効消滅》に［かかる訳ではない］（民法174条の2第2項）。 (2506D) 《裁判上の和解》 ※←　1 確定判決によって確定した権利については，10年より短い時効期間の定めがあるものであっても，その時効期間は，10年とする。裁判上の和解，調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても，同様とする。 2 前項の規定は，確定の時に弁済期の到来していない債権については，適用しない（民法174条の2第2項）。 ※←　弁済期が到来していない債権なので，民法174条の2第1項は適用されない。
	１　アイ　　　２　アウ　　　３　アエ　　　４○イウ　　　５　イエ　　６　ウエ