民法

◎	共有に関する次のアからオまでの各記述のうち，判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは，後記１から５までのうちどれか。 (2512) 【共　有】 **
ア	共有地について筆界の確定を求める訴えを提起しようとする場合に，一部の共有者が訴えの提起に同調しないときは，その余の共有者は，隣接する土地の所有者と訴えの提起に同調しない共有者とを被告として，上記訴えを提起することができる。正しい。 (2512A) 《共同被告》　共有地について筆界の確定を求める訴えを提起しようとする場合に，一部の共有者が訴えの提起に同調しないとき，その余の共有者は，隣接する土地の所有者と訴えの提起に同調しない共有者とを被告として，上記訴えを提起することができる（最判平11.11.9）。 (2512A) 《共同訴訟》 ※←　土地共有者が隣地との境界の確定を求める訴えはその全員が原告となるべき固有必要的共同訴訟であるとした上で，提訴に賛成する共有者は，隣地所有者と共に非同調共有者を被告として訴えを提起することができる（最判平11.11.9）。その理由として，上記判例は，①訴えの提起に同調しない者がいたとしても，隣接する土地との境界に争いがあるときにはその確定が必要なことに変わりないこと，②同訴えにおいては，裁判所は当事者の主張に拘束されず，当事者の主張しない境界線を確定しても民事訴訟法246条に反しないという特質に照らせば，全員が原告又は被告のいずれかの立場で訴訟に関与していれば足りる。
イ	裁判所に請求して共有物の分割をする場合，共有物の現物を分割するか，共有物を競売して売得金を分割する方法のいずれかによらなければならず，共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし，これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法によることはできない。誤り。 (2512B) 《分割方法》　裁判所に請求して共有物の分割をする場合，共有物の現物を分割するか，共有物を競売して売得金を分割する方法のいずれかに［限らず］，共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし，これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法によることも［できる］（民法258条2項）（最判平8.10.31）。 (2512B) 《分割方法》 ※←　前項の場合において，共有物の現物を分割することができないとき，又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは，裁判所は，その競売を命ずることができる（民法258条2項）。 ※←　共有物を共有者のうちの１人の単独所有又は数人の共有としこれらの者から他の共有者に持分の価格を賠償させる方法（全面的価格賠償の方法）によることも許されるとする（最判平8.10.31）。
ウ	共有物について賃貸借契約を締結することは，過半数の持分を有する共有者によって可能であるが，賃貸借契約の解除は，共有者全員によってされる必要がある。誤り。 (2512C) 《管理》　共有物について賃貸借契約を締結することは，過半数の持分を有する共有者によって可能であるが，賃貸借契約の解除は，［過半数の持分を有する共有者：×共有者全員］によってされる必要がある（民法252条本）。 (2512C) 《管理》 ※←　共有物の管理に関する事項は，前条の場合を除き，各共有者の持分の価格に従い，その過半数で決する。ただし，保存行為は，各共有者がすることができる（民法252条本）。 ※←　共有物について賃貸借契約を締結・解除することは，いずれも「共有物の管理に関する事項」にあたる。
エ	ＡＢが共有する土地につき，Ｃが無権限で自己への所有権移転登記をした場合，Ａは，単独で，Ｃに対し，抹消登記手続を請求することができる。正しい。 (2512D) 《保存行為》　ＡＢが共有する土地につき，Ｃが無権限で自己への所有権移転登記をした場合，Ａは，単独で，Ｃに対し，抹消登記手続を請求することができる（民法252条但）。 (2512D) 《保存行為》 ※←　共有物の管理に関する事項は，前条の場合を除き，各共有者の持分の価格に従い，その過半数で決する。ただし，保存行為は，各共有者がすることができる（民法252条但）。 ※←　無効な登記の抹消登記手続を請求することは，共有物の「保存行為」にあたる。
オ	ＡＢが各２分の１の持分で甲土地を共有している場合に，Ｂは，ＡＢ間の協議に基づかずにＡの承認を受けて甲土地を占有するＣに対し，単独で，甲土地の明渡しを求めることはできない。正しい。 (2512E) 《持分による使用》　ＡＢが各２分の１の持分で甲土地を共有している場合に，Ｂは，ＡＢ間の協議に基づかずにＡの承認を受けて甲土地を占有するＣに対し，単独で，甲土地の明渡しを求めることはできない（民法249条）（最判昭63.5.20）。 (2512E) 《持分による使用》 ※←　各共有者は，共有物の全部について，その持分に応じた使用をすることができる（民法249条）。 ※←　他の共有者の持分限度の利用を拒むことはできないので，共有土地の明渡しを請求することはできない。当該共有者が使用を承認した者についても同じである（最判昭63.5.20）。
	１　アイ　　　２　アエ　　　３×イウ　　　４　ウオ　　　５　エオ