民法

◎	抵当権に関する次の１から５までの各記述のうち，正しいものはどれか。 (2515) 【抵当権】 **
１	債務者が所有する不動産に抵当権の設定登記がされ，これが存続している場合には，債務者は継続的に被担保債権に係る債務の存在を承認していることになるから，その抵当権の被担保債権については消滅時効が進行しない。誤り。 (2515A) 《消滅時効の進行》　債務者が所有する不動産に【抵当権】の設定登記がされ，これが存続している場合には，債務者は継続的に被担保債権に係る債務の存在を承認していることに［ならず］，その【抵当権】の被担保債権について消滅時効が［進行する］（民法147条3号）。 (2515A) 《消滅時効のが進行》 ※←　時効は，次に掲げる事由によって中断する。 ① 請　求 ② 差押え，仮差押え又は仮処分 ③ 承　認（民法147条3号）。 ※←　消滅時効における「承認」（民147条3号）とは，時効利益を受けるべき者が権利の存在を権利者に対して表示することをいう。このような表示があれば，権利が存在することは明瞭になるばかりでなく，権利者がこれを信頼して権利の行使を差し控えても，権利の行使を怠っているということにはならないから，これを中断事由とした。抵当権の設定登記には，そのような信頼は生じない。
２	債務者が所有する不動産に抵当権が設定され，その登記がされている場合，その債務者が当該不動産を10年間継続して占有したとしても，その債務者は，抵当権者に対し，抵当権の負担のない所有権を時効により取得したとして，抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することはできない。正しい。 (2515B) 《抵当権の消滅》　債務者が所有する不動産に【抵当権】が設定され，その登記がされている場合，その債務者が当該不動産を10年間継続して占有したとしても，その債務者は，抵当権者に対し，抵当権の負担のない所有権を時効により取得したとして，抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することはできない（民法397条）。 (2515B) 《抵当権の消滅》 ※←　債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは，抵当権は，これによって消滅する（民法397条）。 ※←　抵当権は，債務者及び抵当権設定者に対しては，その担保する債権と同時でなければ，時効によって消滅しない（民法396条）。
３	債務者が所有する同一の不動産について，第一順位の抵当権と第二順位の抵当権が設定され，それぞれその旨の登記がされている場合，第一順位の抵当権の実行としての競売の結果，第一順位の抵当権者のみが配当を受けたときは，第二順位の抵当権は消滅しない。誤り。 (2515C) 《抵当権の実行》　債務者が所有する同一の不動産について，第一順位の【抵当権】と第二順位の【抵当権】が設定され，それぞれその旨の登記がされている場合，第一順位の抵当権の実行としての競売の結果，第一順位の抵当権者のみが配当を受けたときは，第二順位の抵当権は［消滅する］（民執法188条、59条1項）。 (2515C) 《抵当権の実行》 ※←　不動産の上に存する先取特権，使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は，売却により消滅する（民執法188条、59条1項）。 ※←　抵当権実行手続が終了すると，抵当権は消滅する。抵当権者が，当該手続で債権を回収できなかったときは，残額は無担保債権として存続することになる。第二順位の抵当権がある場合も同様である。したがって，第二順位の抵当権は消滅する。
４	債務者が所有する同一の不動産について，第一順位の抵当権と第二順位の抵当権が設定され，それぞれその旨の登記がされている場合，第一順位の抵当権の被担保債権に係る債務を債務者が弁済したときは，債務者は，弁済による代位によって第一順位の抵当権を取得する。誤り。 (2515D) 《債務者の弁済》　債務者が所有する同一の不動産について，第一順位の【抵当権】と第二順位の【抵当権】が設定され，それぞれその旨の登記がされている場合に，第一順位の抵当権の被担保債権に係る債務を債務者が弁済したとき，債務者は，弁済による代位によって第一順位の抵当権を［取得しない］（民法500条）。 (2515D) 《債務者の弁済》 ※←　弁済をするについて正当な利益を有する者は，弁済によって当然に債権者に代位する（民法500条）。 ※←　債務者は自ら履行すべき者であり，弁済により代位することはできない。
５	債務者が所有する不動産に抵当権が設定されている場合，その被担保債権に係る債務について他の者により併存的債務引受がされたときは，当該債務引受によって生じた債権も，その抵当権の被担保債権となる。誤り。 (2515E) 《併存的債務引受》　債務者が所有する不動産に【抵当権】が設定されている場合に，その被担保債権に係る債務について他の者により併存的債務引受がされたとき，当該債務引受によって生じた債権は，その【抵当権】の被担保債権と［ならない］（最判昭41.12.20）。 (2515E) 《併存的債務引受》 ※←　重畳的債務引受があつた場合には、特段の事情のないかぎり、原債務者と債務引受人との間に連帯債務関係が生ずるものと解するのが相当である（最判昭41.12.20）。 ※←　併存的債務引受は引受人が債務者とともに同一内容の債務を負担するものである。　この債務は元の債務と別個独立のものであるから，抵当権の被担保債権とならない。
	正　解　　　２