Ａは，Ｂとの間で，期間を平成22年10月１日から起算して２年とし，賃料を毎月末日に当月分を支払うとの約定で，Ｂ所有の甲建物を賃借する旨の契約を締結し，敷金をＢに交付して，甲建物の引渡しを受けた。その後，Ｂが，Ａに断りなく，甲建物をＣに売却し，その日のうちにＣへの所有権移転登記もされた。

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(2525A) 《賃料の請求》
※←　賃借権が対抗力を有する限り，賃貸人たる地位は目的物の所有権の移転に関する合意のみで当然に移転する（最判昭39.8.28）。そのため，賃貸人たる地位の移転に際して，賃借人の承諾は不要である。もっとも，新所有者が賃借人に賃貸人としての地位を主張し，賃料請求を行うためには，二重払いの危険から賃借人を保護するため，登記が必要である（最判昭49.3.19）。
※←　売却日（平成23年10月31日）に登記を備えており，平成23年11月１日以降の賃料請求が可能である。

(2525B) 《延滞賃料》
※←　Ｃが賃貸人たる地位に基づき，賃料請求をすることができるのは平成23年11月１日以降分であり，それ以前の賃料の延滞分については請求することができない。

(2525C) 《有益費の償還》
※←　賃借人が賃借物について有益費を支出したときは，賃貸人は，賃貸借の終了の時に，第196条第2項の規定に従い，その償還をしなければならない。ただし，裁判所は，賃貸人の請求により，その償還について相当の期限を許与することができる（民法608条2項）。
※←　賃借人が有益費を支出した場合には，賃貸借の終了時に，民法196条2項の規定に従い，その償還請求ができる（民608条本文）。有益費の償還については，その価格の増加が現存する場合に限り請求でき（民196条２項本文），また，賃貸人が交替した場合は，特段の事情のない限り，新賃貸人が償還義務者たる地位を承継することから，新賃貸人に請求ができる。

(2525D) 《敷金の返還》
※←　賃貸人たる地位の移転と敷金関係につき，賃貸借終了前の移転については特段の事情のない限り当然に承継される（最判平11.3.25）。

(2525E) 《契約終了後》
※←　賃貸人たる地位の移転と敷金関係につき，賃貸借終了後の移転については，一度契約関係は終了しており，当然には承継されない（最判昭48.2.2）。