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(1701A) 《一切の戦力》
※←　（憲法条）。憲法９条１項の「国際紛争を解決する手段としては」という文言が放棄しようとする対象に何らかの限定を加える意味をもつものではないと解すると，「国権の発動たる戦争」等は無条件に放棄されていることになり，一切の戦争と武力による威嚇及び武力の行使は，同項によって禁止されることになる。そして，同条１項をこのように解する立場では，同条２項は，「前項の目的」を達成するための裏づけとして戦力の全面不保持を定めた規定と解することになる。従来の国際法の用例によると，「国際紛争を解決する手段」としての戦争とは，国家の政策の手段としての戦争，具体的には侵略戦争を意味する。そこで，上記のような解釈は，「国際紛争を解決する手段」に限定の意味をもたせず広く一切の戦争と解している点て従来の国際法上の用例に合致しないという批判が加えられている。

(1701B) 《自衛戦争》
※←　（憲法条）。９条１項が自衛戦争を禁止していないとする解釈に立ち，同条２項が侵略戦争放棄という「前項の目的」を実質的に達成するために一切の「戦力」の不保持を定めたと解した場合でも，政府の解釈によれば，自衛権は国家固有の権利として第９条の下でも否定されておらず，自衛権を行使するための実力を保持することは憲法上許され，自衛のための必要最小限度の実力は憲法で保持することが禁じられている「戦力」に当たらないとされる。したがって，同条２項が一切の「戦力」の不保持を定めたと解したとしても，外敵との戦闘を主たる目的とする物的組織体を設け得るという解釈が生じる余地がある。
　なお，９条１項では侵略戦争のみを放棄されているとしながら同条２項で一切の戦力の不保持が定められていると解することに対しては，立法技術的にいって９条は拙劣であるとの批判がなされている。

(1701C) 《侵略戦争》
※←　（憲法条）。９条１項の［国際紛争を解決する手段］としての戦争を侵略戦争と解した上で，同条２項は，１項で放棄された侵略戦争を行うための戦力を保持しないことを定めたものと解すれば，自衛戦争のための戦力の保持は否定されないことになり，一定の戦力の保持が許されることになる。このような解釈に対しては，自衛戦争用と侵略戦争用との区別が可能なのかという批判がなされている。