民法

◎	消滅時効の起算点に関する次のアからオまでの各記述のうち，判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは，後記１から５までのうちどれか。 (2606) 【消滅時効の起算点】 **
ア	不確定期限の定めのある債権の消滅時効は，債権者が期限の到来を知った時から進行する。誤り。 (2606A) 《不確定期限》　不確定期限の定めのある債権の【消滅時効】は，［その期限が到来した時：×~~債権者が期限の到来を知った時~~］から進行する（民法166条1項）。 (2606A) 《不確定期限》 ※←　「時効期間は権利を行使することができる時から進行する」。そして，「権利を行使することができる」とは，権利行使につき法律上の障害がなく，権利の性質上，行使を現実に期待することができることをいう。したがって，不確定期限債権の場合は，その期限が到来した時から消滅時効が進行することとなり，債権者が期限の到来を知った時ではない（民法166条1項）。
イ	契約解除に基づく原状回復義務が履行不能になった場合において，その履行不能による損害賠償請求権の消滅時効は，原状回復義務が履行不能になった時から進行する。誤り。 (2606B) 《原状回復義務》　契約解除に基づく原状回復義務が履行不能になった場合において，その履行不能による損害賠償請求権の【消滅時効】は，［本来の債務の履行を請求し得る時：×~~原状回復義務が履行不能になった時~~］から進行する（最判昭35.11.1）。 (2606B) 《原状回復義務》 ※←　（契約解除に基づく原状回復義務の履行不能による損害賠償請求権の）消滅時効は本来の債務の履行を請求し得る時から進行を始めるものと解すべきである（最判昭35.11.1）。
ウ	無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除権の消滅時効は，転借人が転貸借契約に基づいて当該土地の使用収益を開始した時から進行する。正しい。 (2606C) 《賃貸借契約の解除権》　無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除権の【消滅時効】は，転借人が転貸借契約に基づいて当該土地の使用収益を開始した時から進行する（最判昭56.6.16）。 (2606C) 《賃貸借契約の解除権》 ※←　賃貸借契約の解除権は，その行使により当事者間の契約関係の解消という法律効果を発生せしめる形成権であるから，その消滅時効については民法167条１項が適用され，その権利を行使することができる時から10年を経過したときは時効によって消滅すると解するのが相当である（最判昭56.6.16）。
エ	安全配慮義務違反による損害賠償請求権の消滅時効は，損害が発生した時から進行する。正しい。 (2606D) 《安全配慮義務》　安全配慮義務違反による損害賠償請求権の【消滅時効】は，損害が発生した時から進行する（最判平6.2.22）。 (2606D) 《安全配慮義務》 ※←　一般に安全配慮義務違反による損害賠償請求権は，その損害が発生した時に成立し，同時にその権利を行使することが法律上可能となるというべきであることから，消滅時効の起算日は損害発生時である（最判平6.2.22）。
オ	10回に分割して弁済する旨の約定がある場合において，債務者が１回でも弁済を怠ったときは債権者の請求により直ちに残債務全額を弁済すべきものとする約定があるときには，残債権全額の消滅時効は，債務者が弁済を怠った時から進行する。誤り。 (2606E) 《割賦金弁済契約》　10回に分割して弁済する旨の約定がある場合に，債務者が１回でも弁済を怠ったとき，債権者の請求により直ちに残債務全額を弁済すべきものとする［意思表示をした場合に限り：×~~約定があるときには~~］，残債権全額の【消滅時効】は，債務者が弁済を怠った時から進行する（最判昭42.6.23）。 (2606E) 《割賦金弁済契約》 ※←　割賦金弁済契約において，割賦払の約定に違反したときは債務者は債権者の請求により償還期限にかかわらず直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定が存する場合には，一回の不履行があっても，各割賦金額につき約定弁済期の到来毎に順次消滅時効が進行し，債権者が特に残債務全額の弁済を求める旨意思表示をした場合にかぎり，その時から右全額について消滅時効が進行するものと解すべきである（最判昭42.6.23）。
	１　アイ　　　　　　２　アオ　　　　　　３　イエ　　　　　　４○ウエ　　　　　　５　ウオ