民法

◎	贈与に関する次の１から５までの各記述のうち，正しいものはどれか。 (2622) 【贈　与】 **
１	贈与は，自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示することにより成立する単独行為である。誤り。 (2622A) 《諾成契約》　【贈与】は，自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示することにより成立する単独行為では［ない］（民法549条）。 (2622A) 《契約》 ※←　贈与は，当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し，相手方が受諾をすることによって，その効力を生ずる（民法549条）。 ※←　贈与契約は当事者の合意が必要な契約であり，単独行為ではない。
２	書面によらない贈与であれば，履行の終わった部分についても撤回することができる。誤り。 (2622B) 《撤回》　書面によらない【贈与】であって，履行の終わった部分については《撤回》することが［できない］（民法550条但）。 (2622B) 《撤回》 ※←　書面によらない贈与は，各当事者が【撤回】することができる。ただし，履行の終わった部分については，この限りでない（民法550条但）。
３	贈与者は，贈与した特定物を引き渡すまでの間，善良な管理者の注意をもってその物を保存する義務を負う。正しい。 (2622C) 《善管注意義務》　贈与者は，【贈与】した特定物を引き渡すまでの間，善良な管理者の注意をもってその物を保存する義務を負う（民法400条）。 (2622C) 《善管注意義務》 ※←　債権の目的が特定物の引渡しであるときは，債務者は，その引渡しをするまで，善良な管理者の注意をもって，その物を保存しなければならない（民法400条）。 ※←　特定物を贈与した場合，贈与者は受贈者に対して特定物を引き渡す債務を負うから，同条の適用がある。
４	贈与者は，贈与した特定物に瑕疵があった場合，売主と同様の担保責任を負う。誤り。 (2622D) 《瑕疵担保責任》　贈与者は，【贈与】した特定物に瑕疵があった場合，売主と同様の担保責任を負う［訳ではない］（民法551条2項）。 (2622D) 《瑕疵担保責任》 ※←　1 贈与者は，贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について，その責任を負わない。ただし，贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは，この限りでない。 2 負担付贈与については，贈与者は，その負担の限度において，売主と同じく担保の責任を負う（民法551条2項）。 ※←　贈与者が「売主と同じく担保の責任を負う」のは，「負担付贈与」の場合に［負担の限度］の範囲においてのみである（民551条２項）。
５	他人の物を目的とする贈与は，贈与者がその物の権利を取得した時からその効力を生ずる。誤り。 (2622E) 《他人物贈与》　他人の物を目的とする【贈与】は，［契約締結時：×~~贈与者がその物の権利を取得した時~~］からその効力を生ずる（民法549条）（最判昭44.1.31）。 (2622E) 《他人物贈与》 ※←　贈与は，当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し，相手方が受諾をすることによって，その効力を生ずる（民法549条）。 ※←　民法は「自己」の財産の贈与を定めているが（民549条），他人物贈与も有効である（最判昭44.1.31）から，贈与の目的物が他人に帰属していても，当該贈与契約は有効に成立する。他人の物を贈与する契約をした場合，当該契約によって贈与者は所有者であるその他人から所有権を取得してこれを受贈者に移転する義務を負うのであり，贈与者がその物の権利を取得する前から効力は生じている。
	正　解　　　３