公法

◎

　「知る権利」に関する次の文章を読み，後記１から３までの小問に答えなさい。
　「知る権利」という概念は様々な意味で用いられている。まず，最高裁判所は，(ａ)事実の報道の自由が憲法第21条の保障の下にあると述べるにあたり，報道機関の報道が国民の「知る権利」に奉仕することを指摘している。また，「知る権利」は，情報を受領する権利を指して用いられることがあるが，最高裁判所の判決は，閲読の自由ないし情報摂取の自由が(ｂ)ことを認めている。さらに，最近では，「知る権利」が政府に対して情報の開示を求める権利を指して用いられることが多い。
　なお，マス・メディアに対するアクセス権が，マス・メディアに対する「知る権利」と言われることがある。しかし，アクセス権は，「知る権利」というよりは，市民がマス・メディアを利用して表現行為を行う権利である。(ｃ)このアクセス権に対しては様々な批判があり，権利として一般的に承認されてはいない。

〈小問１〉　下線部(ａ)のように述べている最高裁判所の判決を次の１から３までの中から選びなさい。

１

　新聞による公職候補者の前科の公表が名誉毀損罪に当たるか否かが争われた事例についての判決

２

　公職候補者を厳しく批判する雑誌の刊行，販売，配布等を差し止める仮処分が争われた事例についての判決

３

　取材フィルムの提出命令が取材の自由を侵害するとして争われた事例についての判決

〈小問２〉　(ｂ)に入るものとして適切なものを次の１から３までの中から選びなさい。

１

　表現の自由を保障した憲法第２１条第１項によって保障される

２

　表現の自由を保障した憲法第２１条第１項の規定の趣旨，目的から，いわばその派生原理として当然に導かれる

３

　表現の自由を保障した憲法第２１条第１項の精神に照らして十分尊重に値する

〈小問３〉　下線部(ｃ)のいうところのアクセス権に対する批判として明らかに適切でないものを，次の１から３までの中から選びなさい。

１

　アクセス権は，私人であるマス・メディアの作為（意見広告の掲載や反論文の掲載等）を求めるものであるので，国家からの自由であるという表現の自由とは根本的に性格が異なる。

２

　マス・メディアによる報道において批判された者に当該メディアを用いて無料で反論することを認めることは，マス・メディアの側の報道を萎縮させ，批判的な報道がされなくなるおそれがある。

３

　周波数が有限であることから，放送局に対して公平な放送をするように要求することが憲法上認められるので，新聞によって批判された者の当該新聞に対する反論文掲載請求権はともかく，放送局に対する同様の反論放送請求権を認めることはできない。

　正　解　　　３　　２　　３

◎	「知る権利」に関する次の文章を読み，後記１から３までの小問に答えなさい。　「知る権利」という概念は様々な意味で用いられている。まず，最高裁判所は，(ａ)事実の報道の自由が憲法第21条の保障の下にあると述べるにあたり，報道機関の報道が国民の「知る権利」に奉仕することを指摘している。また，「知る権利」は，情報を受領する権利を指して用いられることがあるが，最高裁判所の判決は，閲読の自由ないし情報摂取の自由が(ｂ)ことを認めている。さらに，最近では，「知る権利」が政府に対して情報の開示を求める権利を指して用いられることが多い。　なお，マス・メディアに対するアクセス権が，マス・メディアに対する「知る権利」と言われることがある。しかし，アクセス権は，「知る権利」というよりは，市民がマス・メディアを利用して表現行為を行う権利である。(ｃ)このアクセス権に対しては様々な批判があり，権利として一般的に承認されてはいない。 (1805) 【知る権利】　* ** 　　* ** 　*
	〈小問１〉　下線部(ａ)のように述べている最高裁判所の判決を次の１から３までの中から選びなさい。
１	新聞による公職候補者の前科の公表が名誉毀損罪に当たるか否かが争われた事例についての判決誤り。 (1805A) 《》　新聞による公職候補者の前科の公表が名誉毀損罪に当たるか否かが争われた事例についての判決 (1805A) 《》 ※←　（憲法条）。
２	公職候補者を厳しく批判する雑誌の刊行，販売，配布等を差し止める仮処分が争われた事例についての判決誤り。 (1805B) 《》　公職候補者を厳しく批判する雑誌の刊行，販売，配布等を差し止める仮処分が争われた事例についての判決 (1805B) 《》 ※←　（憲法条）。
３	取材フィルムの提出命令が取材の自由を侵害するとして争われた事例についての判決正しい。 (1805C) 《博多駅テレビフィルム提出命令事件》　「知る権利」という概念は様々な意味で用いられている。まず，最高裁判所は，(ａ)事実の報道の自由が憲法第21条の保障の下にあると述べるにあたり，報道機関の報道が国民の「知る権利」に奉仕することを指摘している。取材フィルムの提出命令が取材の自由を侵害するとして争われた事例についての判決 (1805C) 《博多駅テレビフィルム提出命令事件》 ※←　（憲法条）。判例（最決昭44.11.26）は，「伽道機関の報道は，民主主義社会において，国民が国政に関与するにつき，重要な判断の資料を提供し，国民の『知る権利』に奉仕するものである。したがって，思想の表明の自山とならんで，事実の報道の自由は，表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあることはいうまでもない」と判示している。
	〈小問２〉　(ｂ)に入るものとして適切なものを次の１から３までの中から選びなさい。
１	表現の自由を保障した憲法第２１条第１項によって保障される誤り。 (1805D) 《》　表現の自由を保障した憲法第２１条第１項によって保障される (1805D) 《》 ※←　（憲法条）。
２	表現の自由を保障した憲法第２１条第１項の規定の趣旨，目的から，いわばその派生原理として当然に導かれる正しい。 (1805D) 《》　また，「知る権利」は，情報を受領する権利を指して用いられることがあるが，最高裁判所の判決は，閲読の自由ないし情報摂取の自由が〔表現の自由を保障した憲法第２１条第１項の規定の趣旨，目的から，いわばその派生原理として当然に導かれる〕ことを認めている。さらに，最近では，「知る権利」が政府に対して情報の開示を求める権利を指して用いられることが多い。 (1805D) 《》 ※←　（憲法条）。よど号ハイジャック新聞記事抹消事件において，判例（最大判昭58.6.22 ・憲法百選INo.18)は，」,歔Ｑ，知識，情報の伝達の媒体である新聞紙，図書等の閲読の自由が憲法上保障されるべきことは，思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法19条の規定や，表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨，目的から，いわばその派生原理として当然に導かれるところであ］ると判示し，また，レペタ法廷メモ訴訟事件において，判例（最大判平元｡3.8・憲法百選I Nol79)は，「情報等に接し，これを摂取する自由は，右規定の趣旨，目的から，いわばその派生原理として当然に導かれるところである」と判示している。したがって，判例は，閲読の自由ないし情報摂取の自由が，表現の自由を保障した21条１項の規定の趣旨，目的から，いわばその派生原理として当然に導かれることを認めている。
３	表現の自由を保障した憲法第２１条第１項の精神に照らして十分尊重に値する誤り。 (1805D) 《》　表現の自由を保障した憲法第２１条第１項の精神に照らして十分尊重に値する (1805D) 《》 ※←　（憲法条）。
	〈小問３〉　下線部(ｃ)のいうところのアクセス権に対する批判として明らかに適切でないものを，次の１から３までの中から選びなさい。
１	アクセス権は，私人であるマス・メディアの作為（意見広告の掲載や反論文の掲載等）を求めるものであるので，国家からの自由であるという表現の自由とは根本的に性格が異なる。適切。 (1805D) 《》　なお，マス・メディアに対するアクセス権が，マス・メディアに対する「知る権利」と言われることがある。しかし，アクセス権は，「知る権利」というよりは，市民がマス・メディアを利用して表現行為を行う権利である。(ｃ)このアクセス権に対しては様々な批判があり，権利として一般的に承認されてはいない。　しかし，アクセス権は，私人であるマス・メディアの作為（意見広告の掲載や反論文の掲載等）を求めるものであるので，国家からの自由であるという表現の自由とは根本的に性格が異なると批判される。 (1805D) 《》 ※←　（憲法条）。アクセス権とは，一般に，マス・メディアに対する知る権利，つまり，情報の受け手である一般国民が，情報の送り手であるマス・メディアに対して，自己の意見の発表の場を提供することを要求する権利を言う。このアクセス権は私人であるマス・メディアに対して一定の行為を要求する請求権であるので，国家からの自由，すなわち自由権としての表現の自由とは根本的に性格が異なると批判される。
２	マス・メディアによる報道において批判された者に当該メディアを用いて無料で反論することを認めることは，マス・メディアの側の報道を萎縮させ，批判的な報道がされなくなるおそれがある。適切。 (1805D) 《》　また，マス・メディアによる報道において批判された者に当該メディアを用いて無料で反論することを認めることは，マス・メディアの側の報道を萎縮させ，批判的な報道がされなくなるおそれがあると批判される。 (1805D) 《》 ※←　（憲法条）。判例（最判昭62.4.24）は，新聞の記事に取り上げられた者が，その記事の掲載によって名誉毀損の不法行為が成立するかどうかとは無関係に，自己が記事に取り上げられたというだけの理由によって，新聞を発行・販売する者に対し，当該記事に対する自己の反論文を無修正で，しかも無料で掲載することを求めることができるものとするいわゆる反論権の制度」は，新聞を発行・販売する者に対し反論文の掲載等の負担を強い，これらの負担が，批判的記事，ことに公的事項に関する批判的記事の記載をちゅうちょさせ，憲法の保障する表現の自由を間接的に侵す危険につながるおそれも多分に存するのである」と批判している。
３	周波数が有限であることから，放送局に対して公平な放送をするように要求することが憲法上認められるので，新聞によって批判された者の当該新聞に対する反論文掲載請求権はともかく，放送局に対する同様の反論放送請求権を認めることはできない。不適切。 (1805D) 《サンケイ新聞事件》　なお，周波数が有限で［あっても］，放送局に対して公平な放送をするように要求することが憲法上［認められず］，新聞によって批判された者の当該新聞に対する反論文掲載請求権はともかく，放送局に対する同様の反論放送請求権を認めることはできない。 (1805D) 《サンケイ新聞事件》 ※←　（憲法条）。　このことは，新聞社だけでなく放送局でも同様であるので，周波数が有限であるとしても私人である放送局に対する請求権が憲法上認められることにはならない。
	正　解　　　３　　２　　３