民法

◎	請負に関する次のアからオまでの各記述のうち，判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは，後記１から５までのうちどれか。 (2928) 【請　負】 **
ア	請負人は，仕事の目的物の引渡しを要する場合には，これを引き渡した後でなければ，報酬を請求することができない。誤り。 (2928A) 《引渡しと同時》　【請負人】は，仕事の目的物の引渡しを要する場合には，［引渡しと同時：×これを引き渡した後］でなければ，報酬を請求することができない（民法633条）。 (2928A) 《引渡しと同時》 ※←　報酬は，仕事の目的物の引渡しと同時に，支払わなければならない。ただし，物の引渡しを要しないときは，第624条第1項の規定を準用する（民法633条）。民法633条本文によると，報酬の支払い時期は引渡しと同時が原則である。したがって，引渡しは先履行とならず，仕事の完成が先履行となるにすぎない。
イ	請負人が仕事の目的物を引き渡した場合において，その目的物に瑕疵があり，注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償を請求したときは，注文者は，その賠償を受けるまでは報酬全額の支払を拒むことができる。正しい。 (2928B) 《損害賠償請求権》　請負人が仕事の目的物を引き渡した場合に，その目的物に瑕疵があり，注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償を請求したとき，【注文者】は，その賠償を受けるまでは報酬全額の支払を拒むことができる（旧民法634条2項）。 (2928B) 《損害賠償請求権》 ※←　（旧民法634条2項）。瑕疵修補に代えて損害賠償を請求する場合には，同時履行の抗弁の規定(533条）が準用される(634条２項）。したがって，瑕疵修補に代わる損害賠償請求権と，請負人の報酬請求権は同時履行の関係に立つので，注文者は，賠償を受けるまで報酬全額の支払いを拒むことができる。
ウ	建築請負の目的物である建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかはない場合であっても，注文者は，請負人に対し，建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することはできない。誤り。 (2928C) 《建替費用相当額》　建築請負の目的物である建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかはない場合，【注文者】は，請負人に対し，建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することが［できる］（旧民法635条但）（最判平14.9.24）。 (2928C) 《建替費用相当額》 ※←　（旧民法635条但）。建築請負の場合において,解除が制限されているが(635条ただし書），目的物の建物の瑕疵が著しく重大であって，建て替えるはかない場合には，注文者が請負人に対し建替費用相当額の賠償を請求することを認めても、解除を制限した趣旨に反することにならないので，認められる（最判平14.9.24）。
エ	請負人の担保責任の存続期間は，これを契約で伸長することができない。誤り。 (2928D) 《担保責任の存続期間》　【請負人】の担保責任の存続期間は，これを契約で伸長することが［できる］（旧民法639条）（最判昭51.3.4）。 (2928D) 《担保責任の存続期間》 ※←　（旧民法639条）。民法637条１項で除斥期間と１年とされているが（最判昭51.3.4），639条により, 167条の規定による時効期間（10年）まで、契約で伸長することができる。
オ	請負人が仕事を完成しない間は，注文者は，いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができるが，契約の目的である仕事の内容が可分である場合において，請負人が既に仕事の一部を完成させており，その完成部分が注文者にとって有益なものであるときは，未完成部分に限り，契約を解除することができる。正しい。 (2928E) 《未完成部分の解除》　請負人が仕事を完成しない間は，【注文者】は，いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができるが，契約の目的である仕事の内容が可分である場合に，請負人が既に仕事の一部を完成させており，その完成部分が注文者にとって有益なものであるとき，未完成部分に限り，契約を解除することができる（大判昭7.4.30）。 (2928E) 《未完成部分の解除》 ※←　（民法条項）。設問と同種の事案につき判例は，目的物が可分であって，完成した部分だけでも注文者に利益が生じている場合において，未完成工事部分についてのみ契約の解除を認めている（大判昭7.4.30）。
	１　アウ　　　　　２　アエ　　　　　３　イエ　　　　　４○イオ　　　　　５　ウオ